御室藝術祭について
京都仁和寺 御室藝術
4.8プロジェクト
総本山仁和寺は、文化を守り、育てていくことを目的として2021年より実施している「京都仁和寺御室藝術4.8プロジェクト」の一環として、藝術祭「御室花まつり2024〜花と自然〜」を令和6年3月23日(土)より開催いたします。
「花」花は華なり、こころなり
仁和寺にとって、花とは、仏教の教えに基づいて、人々の心を豊かにするための重要な存在です。仁和寺の境内には、さまざまな種類の花が植えられています。その花の役割は、仏教の教えを表現すること、そして、参拝者を癒すことにあります。つまり、花は、仏教において、悟りの象徴であり、人の心を癒す力があるということです。花は、「無理することなく、それぞれが与えられた場所で自らの命を精一杯輝かせて生きるもの」「人間も花のように、命を大切にしながら、日々豊かな人生を歩もうではないか」ということを教えてくれます。
「自然」真言密教の真髄「宇宙」に由来
真言密教にとって「宇宙」という考え方は、存在するもの、行きとし生けるものすべてに価値があり、意味や理由があってそこに存在している、としています。自然界における草も木も蝶も鳥も人間も、どんなものにも価値があって、その瞬間瞬間にはどれが欠けてもいけない、ということを教えてくれます。今回の展覧会のテーマは、この花や自然を日本画等で表現して、御室桜や御室ツツジによって華やいでいる仁和寺境内で、悟りをいただくという、心豊かな設えです。展示作品と重要文化財に指定されている黒書院の空間との調和を目指します。藝術に一生を捧げている作家の皆さんが花や自然をテーマに縁を結び、春の華やいでいる仁和寺の壮大な歴史を纏った空間で、みなさまに花を、自然を、こころを感じて考えていただきたいです。
本プロジェクトの背景
文化財の新たな価値づくりと、新たな美意識や文化を育てていくことの必要性
約1200年の歴史を持つ世界遺産 仁和寺は、広大な土地と建物、多くの宝物を所有しておりますが、日本の社会現象である少子高齢化による社会保障費の増額、日本人拝観者の減少などが予想されており、文化財保護のための財源の確保が最重要課題となっています。現状の予算では、補助対象となる国宝や重要文化財の維持管理にとどまり、補助対象とならない建造物の修繕や増改築には踏み切れないのが現実です。天災などによる修繕費用もかさむ中で、助成だけに頼るのではなく、所有者自らが保有する文化財の保存修理費用を捻出できるような新たなしくみを整えて自立していくことが急務であると私たちは考えています。また、先人たちから受け継いだ建築物を含む文化を100年、200年先に伝えていくためには、時代に応じた取り組みによって新たな付加価値を発進していく必要があります。
そのような考えのもと、世界遺産 仁和寺では、境内の歴史的建造物「松林庵」を宿泊施設として活用する事業や、SDGsを意識した敷地内「成就山御室88ヶ所」の整備事業、所有文化財をデジタル化し、アーカイブを構築して公開する事業など、様々な取り組みを行なってまいりました。文化財をより価値のある資源として活用し、ひいては新たな文化財の創出や、技術の継承に継承につなげて行くことが大切と考えております。
世界遺産 仁和寺が守り伝えてきた古典文化と、現代アートをつなぐことにより新たな美意識、文化を育てていくことになればという思いで、この度の芸術祭を企画いたしました。